
渡辺謙 国内の映画賞で初の栄冠
第31回(2006年12月21日)@ザ・プリンス パークタワー東京(東京・芝公園)
渡辺謙が全身全霊をかけて臨んだ作品で栄冠をつかみ取った。原作に惚れ込んで自ら映画化を企画した「明日の記憶」(堤幸彦監督)は、主演だけでなくエグゼクティブ・プロデューサーとして宣伝プランも考案。公開前からPRに駆け回った。病魔に侵されていく難役に果敢に挑戦。封印していた自らの闘病生活(急性骨髄性白血病)の記憶とも真正面から向き合い、「ものすごく楽に自然体で生きられるようになりました」。
白血病の治療の際に感染したC型肝炎とも闘った。副作用の発熱に苦しめられたが、注射を打ちながら撮影に臨んだ。妻で女優の南果歩を心の支えに乗り切り、表彰式の壇上では劇中で妻を演じた樋口可南子と固い抱擁。喜びを分かち合った。
「ラスト サムライ」や「硫黄島からの手紙」で堂々たるハリウッドスターの座を築いた世界のケン・ワタナベだが、意外にも国内の映画賞とはこれまで無縁。しかし邦画初主演で見事に主演男優賞を射止め、その後、日刊スポーツ映画大賞、キネマ旬報ベスト・テン、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞の4つの主演男優賞を獲得した。「すべてを認めてやるぞと言われた気がする。存外の喜びです」飛びっきりの笑顔が喜びを物語っていた。
渡辺謙同様、この年の映画賞の主役の座についたのが「フラガール」(李相日監督)。福島の炭坑の町が、常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)に生まれ変わる実話を、フラダンスショーを軸に描きさわやかな感動を呼んだ。この作品で一気に大ブレークしたのが、助演女優賞の蒼井優。この後、日刊スポーツ映画大賞では新人賞、ブルーリボン賞では主演女優賞、キネマ旬報ベスト・テンと日本アカデミー賞では助演女優賞と、この年は「蒼井優」の名前が呼ばれない映画賞はなかった。
映画自体も軒並み作品賞に輝き、大手の受賞が目立つ日本アカデミー賞でも作品賞を受賞。インディペンデント(独立)系製作としては異例の作品賞に輝き、李鳳宇プロデューサーは「日本アカデミーはインディペンデントの会社が取れない賞だと思っていた」と全身で喜びを表していた。
第31回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「フラガール」李相日監督
- 「(助演女優賞の蒼井優を祝福し)僕も彼女が日本映画を背負って立つと思います。(映画の)細かいシーンは忘れても、最後のダンスシーンはいつまでも心に残ると思います」
- ■監督賞
- 根岸吉太郎「雪に願うこと」
- 「(ばんえい競馬関係者から)経営的にしんどいのに祝ってくれてね。すごく世話になって一緒に作ってたようなものだから、お互いにシンパシーを感じ合ってる」
- ■主演男優賞
- 渡辺謙「明日の記憶」
- 「この映画を通して、生きていることがどれほど素晴らしいことかを感じた」
- ■主演女優賞
- 中谷美紀「嫌われ松子の一生」「LOFT」
- 「今まであまり賞をいただいたことがなかったので実感がなかったんですが、実際に会場に来て、(中島哲也監督からの)お手紙を読んでいただいたら、本当に夢じゃないんだなと思って…。監督に褒められたこと? 初めてだと思います」
- ■助演男優賞
- 香川照之「ゆれる」「明日の記憶」
- 「きょうは(渡辺)謙さんにおめでとうを言いたかった。(『明日の記憶』では)謙さんの温かいまなざし、心意気に動かされたから。謙さんが信長なら僕は秀吉。いつまでも『ははぁー』って感じですね」
- ■助演女優賞
- 蒼井優「フラガール」「ハチミツとクローバー」
- 「父も母も(受賞の)実感がわかないようで、『すてきな人たちに囲まれてよかったね』と言ってました」
- ■新人賞
- 松山ケンイチ「デスノート」「男たちの大和/YAMATO」
- 「もちろんうれしいけど、なぜ個人賞なんだろうって。映画は総合芸術。僕は歯車のひとつになりたい。今度は作品賞? そうですね」
- ■海外作品賞
- 「父親たちの星条旗」クリント・イーストウッド監督
- ■特別賞
- 「時をかける少女」細田守監督
- 故・黒木和雄監督
