
渡哲也 直腸がんから復帰作で助演男優賞
第21回(1996年12月26日)@東條会館(東京・半蔵門)
読売巨人軍が最大11・5ゲーム差つけられた広島を破って優勝する“メークドラマ”が生まれた2か月後、映画界にも“メークドラマ”があった。91年に直腸がんの手術をし、病気を克服して10年ぶりの映画出演を果たした渡哲也が助演男優賞を獲得した。映画で賞を受賞するのも、76年度にブルーリボン賞主演男優賞を受賞して以来、20年ぶりのことだった。
渡はこの年、NHK大河「秀吉」に織田信長役で出演。74年にNHK大河「勝海舟」の主演に起用されながら、胸膜炎を患い途中降板したリベンジを果たした。そして、大河直後に撮影に臨んだ「わが心の銀河鉄道・宮沢賢治物語」(大森一樹監督)での栄冠だった。
東映の岡田茂会長から直接オファーを受けると「出演料はなしでいい。銀座で一杯、飲ませてくれれば」と、異例の条件で引き受けた。「自分の病気、年齢、体力のことを考えると今後、それほど多くの仕事はできない。これが最後の仕事だと思ってやりたい」緒形直人演じる宮沢賢治の父親役で臨んだ久しぶりの長編映画出演は、自分を育ててくれた映画界への“感謝の証し”でもあった。
表彰式の翌日には、亡くなってから10年がたって初めて師と仰いだ故・石原裕次郎さんのゆかりの地・ハワイを訪れた。「ようやく石原に顔向けできるようになったかなあ、ということでしょうか」渡にとって大きな区切りとなる受賞だった。
快挙も生まれた。21年目を迎えた報知映画賞で初めて“三冠王”が誕生した。記念すべき第1回で新人賞、第11回に助演女優賞、そして今回、「絵の中のぼくの村」(東陽一監督)で見事に主演女優賞を獲得した原田美枝子だ。「前回の表彰式で、この次は10年後とあいさつしたら、今年、正夢になって…。本当にうれしい」と喜びを爆発させた。
作品賞は周防正行監督の「Shall we ダンス?」。前作「シコふんじゃった。」に続く“連覇”。“ご褒美”は受賞だけでなく、97年には「Shall-」の主演女優・草刈民代と結婚し、世間を驚かせた。
また、映画界の大きな財産を失った年でもある。「寅さん」のキャラクターで国民的人気を誇った渥美清さんが、転移性肺がんのため、8月4日に68歳で亡くなった。その功績をたたえ、松田優作さん(第14回)以来、2人目となる故人への特別賞が贈られた。
第21回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「Shall we ダンス?」周防正行監督
- 「前作(「シコふんじゃった。」)は必ずしも興行的には成功しなかったので、賞によって応援してもらったという印象があった。今回はヒットした上に作品的な評価をいただいたわけで、また違った感動を持った」
- ■監督賞
- 森田芳光「(ハル)」
- 「賞っていうのは過去に対してもらうものなんだけど、今度の賞ばっかりは、未来に対してもらったと思ってます。(次回作『失楽園』で主演する)役所にとっても、ボクにとってもね」
- ■主演男優賞
- 役所広司「Shall we ダンス?」「眠る男」「シャブ極道」
- 「それぞれ個性的な作品で苦労も多かった。『Shall-』ではダンスを覚えることがそのまま、役作りになった。練習を始めたばかりの最初の30分間は恥ずかしくて仕方なかった」
- ■主演女優賞
- 原田美枝子「絵の中のぼくの村」
- 「きょうは私の誕生日なんです。(夫で俳優の石橋)凌さんと受賞できたらよかったですね」
- ■助演男優賞
- 助演男優賞:渡哲也「わが心の銀河鉄道・宮沢賢治物語」
- 「この賞をキッカケに来年は2本くらいは映画に出たいと思っています。来年は報知主演男優賞を目指して頑張ります」
- ■助演女優賞
- 渡辺えり子「Shall we ダンス?」
- 「40歳にもなって、泣きながら稽古しました。ダンスは2人で完成するもの。映画で描かれているような、いがみ合いみたいなものが撮影中もありました」
- ■新人賞
- 安藤政信「キッズ・リターン」
- 「5年先、10年先を見ながら一歩一歩前進していきたい。いつまでも残る映画が大好き」
- ■海外作品賞
- 「セブン」デヴィッド・フィンチャー監督
- ■特別賞
- 故・渥美清(日本人に愛された「寅さん」というキャラクターを演じ続けた功績に対して)
