
コミカルなショーケンで「居酒屋ゆうれい」が3冠
第19回(1994年12月27日)@第一ホテル東京(東京・新橋)
「居酒屋ゆうれい」(渡辺孝好監督)が主演男優、助演女優、新人賞の3部門を制した。幽霊になった前妻(室井滋)と若い後妻(山口智子)とのコミカルな三角関係を演じ、主演男優賞を手にした萩原健一も、「3冠取るとは思ってもみなかった」と驚きを隠せない。「デビューして約30年、恥ずかしながら、こういう席は初めてです。何を言っていいか」とシャイな笑顔を見せた。
大ヒットドラマ「傷だらけの天使」に代表されるように、かつてはアウトローのイメージが強かった萩原だが、帰省ラッシュに巻き込まれるパパ役を演じた91年の映画「渋滞」が転機になった。劇中、疲れ果て缶ビールを片手に寝る姿が、サントリーの「うまいんだな、これがっ!」のCMに結びつき、93年のコメディードラマ「課長さんの厄年」がヒット。ひょうきんなキャラクターを確立し、芸域をグーンと広げた。
「棒の哀しみ」で監督賞の神代辰巳監督は、74年の主演作「青春の蹉跌」でコンビを組んだ仲。「役者デビュー当時の僕の師匠。いろんなことを教わりました。それを、生意気なようですが後輩に教え、一つ一つ丁寧に仕事をしてきたつもり。それらすべてが認められたと思う。神代監督に感謝します」と萩原は静かに喜びをかみしめた。対照的に“妻”の室井は和服姿で大はしゃぎ。表彰式会場に姿を見せるやいなや、ショーケンの手を取り、跳び上がって喜んだ。
ひときわ光を放っていたのは、第16回の工藤夕貴(20歳10か月)に次ぐ若さでの主演女優賞となった当時21歳の高岡早紀だ。受賞作「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(深作欣二監督)まで約1年間、仕事らしい仕事を入れず芸能活動を休業していた。神奈川の実家に戻って「朝のんびり起きて犬の散歩をして」という生活の中で出した結論は「やっぱり仕事がしたい」。劇中では妖艶(ようえん)な裸体を披露して話題を集め、翌年1月に発売された篠山紀信氏撮影のヘアヌード写真集も空前のヒットになった。
また「全身小説家」で作品賞に輝いた原一男監督は、「ゆきゆきて、神軍」で監督賞を受賞した第12回以来、7年ぶり2度目の報知映画賞。作家・井上光晴氏の生き様を追っていくうちに、その経歴の虚構が明らかになる骨太の1本は、作品賞では初めてのドキュメンタリー作品になった。
第19回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「全身小説家」原一男監督
- 「25歳から24年かかってまだ4本目。賞金の50万円は次に自主製作する映画のために定期預金します」
- ■監督賞
- 神代辰巳「棒の哀しみ」
- 「(肺気胸を克服して6年ぶりのメガホンに)ブランクといっても自分ではことさら変わらないつもり。酸素ボンベも意外に軽くて持ち運びも便利。撮影にも不自由しませんでした」
- ■主演男優賞
- 萩原健一「居酒屋ゆうれい」
- 「映画はやはりハーモニー。ピアノの鍵盤(けんばん)をうまく調律してくれた渡辺(孝好)監督に感謝したい」
- ■主演女優賞
- 高岡早紀「忠臣蔵外伝 四谷怪談」
- 「(ヌードが騒がれることについて)いいんです、別にどう騒がれようと。私は服だけでなく、自分を全部脱いだつもりだから」
- ■助演男優賞
- 中井貴一「四十七人の刺客」
- 「報知映画賞はこれまで何度かファン投票1位になった。それだけで誇らしく思っていたのに、賞まで」
- ■助演女優賞
- 室井滋「居酒屋ゆうれい」
- 「周りの人たちが喜んでくれるのを見ていて『よかったなあ』という気分です。あんまり褒められると自分の顔が引きつり気味になるんです」
- ■新人賞
- 山口智子「居酒屋ゆうれい」
- (劇中のセリフを引用したメッセージを寄せ)「今ここにいる自分が好きです。だから私は世界で一番幸福」
- ■海外作品賞
- 「シンドラーのリスト」スティーブン・スピルバーグ監督
