
もう逮捕はご免? 警官姿の内田裕也に会場爆笑
第11回(1986年12月26日)@東條会館(東京・半蔵門)
「ほんとかよ、オイ。冗談言ってんじゃないだろうな」ハワイ国際映画祭を訪れていた内田裕也は、受賞の第一報を国際電話で聞いた。「報知から国際電話だっていうから、オレまた何か悪いことしたかなって考えちゃったぜ」
自ら企画し、脚本を手掛け、主演した「コミック雑誌なんかいらない!」(滝田洋二郎監督)では、突撃取材を繰り返す芸能リポーター役を通してエスカレートする一方の芸能マスコミに疑問を投げかけた。過激な内容に国内での興行成績はいまいちだったが、5月の第39回カンヌ国際映画祭の監督週間に出品されると大絶賛を浴びた。「前日は心配でイライラして、人に当たり散らしてたよ」という裕也だったが、上映後に熱狂の拍手に包まれるとすっかりご満悦。「ロック歌手ふぜいが、と陰口をたたかれながら、まじめにやってきた甲斐があったよ」
カンヌでの受賞はならなかったが、報知映画賞では見事、作品賞と主演男優賞をもぎ取った。表彰式スタート時はスーツに黒いコート、サングラス姿だったのに、司会者から主演男優賞の名前がアナウンスされるとすっと立ち上がり舞台袖へ。「あれ?」ほかの受賞者や観客があっけにとられる中、しばらくして警察官の制服姿で再登場。賞状とブロンズ像を受け取って突き上げた右手が誇らしげだった。
同作には、“ロス疑惑”の渦中にあった三浦和義氏が本人役で、ビートたけしが豊田商事会長殺害犯役で出演した。しかし表彰式3週間前、たけしが“軍団”の11人を引き連れて写真誌「フライデー」に殴り込み、暴力行為と傷害の現行犯で逮捕。前年には三浦氏が81年に愛人だった元女優に対して殴打したとして殺人未遂容疑で逮捕された。警官服はにっかつの衣装部から借りてきたもの。「出演者が2人も逮捕されたので、この辺で食い止めようと思いまして」人を食ったようなコスプレ理由に、会場は爆笑だった。もっとも、自身も包丁を手にウドー音楽事務所に押し入って暴れるなど、何度か警察ざたになっているのだが…。
主演と助演の女優賞は「火宅の人」(深作欣二監督)のいしだあゆみと原田美枝子に。第1回で新人賞を取っている原田は「助演をもらうまで10年間かかったから、主演をもらえるのはまた10年後かなあ」とスピーチしたが、その予告通り?第21回で主演女優賞を手にする。
第11回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「コミック雑誌なんかいらない!」滝田洋二郎監督
- 「映画賞なんてかすったこともないからなあ。ロックの延長戦上で映画を作っている。自分自身にウソをつかなかったことが認められたんだろう。うれしいなあ、ホント」(主演の内田裕也)
- ■監督賞
- 根岸吉太郎監督「ウホッホ探検隊」
- 「(ロードショーが1週間しか続かず)あれだけ(客が)入らないと、むしろスッキリして気持ちいいよ」
- ■主演男優賞
- 内田裕也「コミック雑誌なんかいらない!」
- 「俺はいずれアカデミー賞を狙う。米国のだぜ。笑いたいヤツは笑わせとくさ。でも俺は言ったことは必ず実行してきたんだ」
- ■主演女優賞
- いしだあゆみ「火宅の人」「時計/アデュー・リベール」
- 「監督さんの指示通りに動き、緒形さんにつられていただけ。好きでやってる職業。これからも着実にやっていく」
- ■助演男優賞
- すまけい「キネマの天地」
- 「いやあ、どんな俳優になりたいかって? あんた50歳を過ぎてから、そんな夢は持てませんよ」
- ■助演女優賞
- 原田美枝子「火宅の人」
- 「等身大でできた。28歳の誕生日(12月26日)にステキなプレゼントをありがとう。今度は主演女優賞を狙って頑張ります」
- ■新人賞
- 斉藤由貴「雪の断章-情熱」
- 「こんなに、あたし、大がかりな賞とは思わなかったから、お化粧もしてないし、衣装も普通にしてきたの。恥ずかしい。お化粧をしてないのは紅白のため。だって少しでもつやつやした肌で見てもらいたいでしょ」
- ■海外作品賞
- 「カイロの紫のバラ」ウディ・アレン監督
