
平田満がガチガチの直立不動で主演男優賞を受賞
第7回(1982年12月27日)@東條会館(東京・半蔵門)
80年に初演されたつかこうへい作・演出の舞台「蒲田行進曲」。当日券を求めて朝5時半から女性ファンが並ぶなど大評判を呼んだが、深作欣二監督がメガホンを執った映画版も、報知映画賞から翌年の日本アカデミー賞まで作品賞を総なめにする絶賛の嵐を浴びた。
同作で大部屋役者ヤスを演じ主演男優賞を勝ち取った平田満は、ロケ先の名古屋から会場にギリギリで滑り込んだ。が、緊張のあまり表彰状を床に落としてしまい場内は大爆笑。共演した前年の主演女優賞・松坂慶子や深作監督から祝福されても直立不動で、「もののはずみで役者になりました。大変な賞をいただき緊張しています」と恐縮しきりだった。
主演女優賞の桃井かおりは、夫に3億円の保険をかけ殺害した容疑で逮捕される悪女・球磨子(くまこ)を演じた「疑惑」(野村芳太郎監督)での受賞。役作りではデヴィ夫人を参考にしたそうで、「見ている人にいやな女と思われるほど成功という役」を迫力たっぷりに演じた。
作家の伊集院静氏をめぐる夏目雅子との三角関係やつかこうへい氏との熱愛などの“疑惑”を書き立てられた1年。群がる報道陣に「いい年の女なんだから、男の友達くらいいますよ。恋人がいないのがいけないわけ」と食ってかかったこともあった。「だからこういう得(受賞)が最後に飛び込んでくるとは思わなかったの」。もっとも表彰式では客席に父で軍事評論家の桃井真氏の姿があったせいか、いつになくしおらしかった。
新人賞に輝いたのは「転校生」(大林宣彦監督)の小林聡美。同級生の男の子と体が入れ替わってしまった女子中学生という難役にも、「ご飯の食べ方、ボタンの掛け方など、日常の仕草一つでも、男の子を演じきれない自分に、普段は男っぽくても、やはり女の子だなあとホっとしたり」とひょうひょうとしたもの。表彰式には大林監督も駆けつけ祝福した。
大林監督は翌年も「時をかける少女」の原田知世のプレゼンターとして登場。その後も石田ひかり(第16回)、大森嘉之(第17回)を送り出す“新人賞キラー”ぶりを発揮し、日本映画界に新たな才能を送り続けている。新人賞輩出4人は報知映画賞では最多記録。相米慎二監督(斉藤由貴、牧瀬里穂、田畑智子)、市川準監督(髙嶋政宏、牧瀬里穂、池脇千鶴)が3人で続いている。
第7回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「蒲田行進曲」深作欣二監督
- 「大作ばやりの中で、変化球ともいえる作品を評価してもらって大変うれしい」
- ■主演男優賞
- 平田満「蒲田行進曲」
- 「十分な実績がないままもらうので、周りから風当たりも強いと思う。プレッシャーもあるが乗り越えて、自分の可能性を広げたい」
- ■主演女優賞
- 桃井かおり「疑惑」
- 「年齢的(30歳)にも、あえてプレッシャーの多い役を選ぶ転換の年。だからこういう得(賞)が最後に飛び込んでくるとは考えてもみなかったの。うれしくって昨日も一昨日も乾杯して目がハレちゃって…」
- ■助演男優賞
- 柄本明「男はつらいよ・寅次郎あじさいの恋」「道頓堀川」
- 「根っからの凝り性で『道頓堀川』のやさしくサディスチックな幇間(ほうかん=男芸者)を演じたときは1か月間、三味線と小唄を習うと同時に、ヌメッとした気持ち悪さをどう出すか、苦労した」
- ■助演女優賞
- 山口美也子「さらば愛しき大地」
- 「にっかつをやめて3年間、舞台、テレビ、映画とやってきましたが、長い冬が終わって春がやっときた感じです」
- ■新人賞
- 小林聡美「転校生」
- 「新人賞って一生に1度だけしかいただけない賞でしょう、うれしいやらビックリするやらで胸がキューンといきそう」
- ■海外作品賞
- 「カリフォルニア・ドールズ」(ロバート・アルドリッチ監督)
- ■特別賞
- シネマスクエアとうきゅう(商業劇場として都心にミニシアターを成功させた)
