
山田辰夫と荻野目慶子 新人賞は初の2人受賞
第5回(1980年12月26日)@東條会館(東京・半蔵門)
いずれも甲乙つけがたい、と新人賞は初めて2人同時受賞になった。
「狂い咲きサンダーロード」「鉄騎兵、跳んだ」でパワーのある芝居を見せた山田辰夫には、驚きの祝福が待っていた。所属する劇団「GAYA」の仲間8人が舞台に駆け上がり「ワッショイ! ワッショイ!」と胴上げ。宙に舞う山田は「なんだ、お前ら」と戸惑いながらも、喜びの表情を浮かべた。
もう一人の新人賞、荻野目慶子は当時、弱冠16歳の高校1年生。校則が厳しく、受賞作「海潮音」の撮影後は学業を優先し休業していた。表彰式はちょうど冬休みに入ったばかり。「読みたい本がたくさんあるので、冬休みはずっと読書です。内面の充実をはかろうと思っているの」と初々しく話していた。
仕事に復帰したのは83年の「南極物語」。それまでの邦画の配収記録を大幅に塗り替える59億円という大ヒットになった作品で、再び女優としてクローズアップされる。
その「南極物語」に更新されるまで27億円の邦画配収記録を持っていたのが、この年の作品賞「影武者」。黒澤明監督と勝新太郎の初顔合わせが撮影前から注目を集めていた。完璧主義者で“黒澤天皇”と言われた監督と、根っからの役者バカ・勝。個性の強い2人がぶつかる危険性を危惧する声はクランクイン前からあがっていたが、その不安は的中する。主演の武田信玄を演じる勝が研究のため演技している姿をビデオカメラで撮影しようとしたところ、黒澤監督が「その必要はない。私が見ているのだからいいじゃないか」と認めず、両者は決裂。結局、勝は撮影からわずか2日で降板することになった。79年7月21日の報知新聞は、この降板劇を1面で報じている。
それから1か月半後、都内のホテルで記者会見した勝は「黒澤監督にオレの存在は重かったんではないか」と勝らしい表現で振り返った。
代役には原田芳雄、井川比佐志らの名前もあがったが、「七人の侍」「用心棒」などで黒澤組を経験していた仲代達矢に決定。報知映画賞では受賞を逃したが、仲代はこの「影武者」で18年ぶりのブルーリボン主演男優賞を手にする。
第5回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「影武者」黒澤明監督
- ■主演男優賞
- 古尾谷雅人「ヒポクラテスたち」
- 「映画にあんまり出ていない駆け出しのオレが主演賞だって、信じられないなあ。でも本当にうれしい」
- ■主演女優賞
- 倍賞千恵子「遙かなる山の呼び声」「男はつらいよ」シリーズ
- 「今年は私にとってとても大切な方が次々と5人も亡くなったうえ、ご存じのように(舞台俳優の小宮守と)離婚でしょ。そんなときに、それも1年を締めくくるときに思いもかけぬ吉報が舞い込んだのだから、こんなにうれしいことないわ」
- ■助演男優賞
- 山崎努「影武者」
- 「黒澤監督作品は2度やっており、長期の撮影には慣れていましたが、途中休みもあり、長い間、同じコンディションを持続させるのが大変でした」
- ■助演女優賞
- 阿木燿子「四季・奈津子」
- 「演技の“エ”の字も知らないのに受賞したのは、ひとえに東陽一監督の演出のすばらしさだと感謝しております」
- ■新人賞
- 荻野目慶子「海潮音」
- 「監督さん(橋浦方人)が『人間は悲しみを通して強くなる』とおっしゃったのを、心の支えにしてやったのがよかったのかもしれません」
- 山田辰夫「狂い咲きサンダーロード」「鉄騎兵、跳んだ」
- 「賞には全然、縁がなかったので、卒倒しそう。なんだかツキすぎた年で怖いような気がしています」
- ■海外作品賞
- 「クレイマー、クレイマー」ロバート・ベントン監督
- ■特別賞
- 「ツィゴイネルワイゼン」(映倫を通さない新しい上映形態を評価)
