
「犬神家の一族」で報知映画賞がスタート
第1回(1976年12月26日)@東條会館(東京・半蔵門)
抽選で選ばれた映画ファン400人が見守る中、報知映画賞が船出した。記念すべき第1回の表彰式は、日本テレビ・石川牧子アナの司会によってスタート。作品賞に選ばれたのは、沈滞する日本映画界の台風の目になった角川書店の映画進出第1作「犬神家の一族」だった。
製作費2億円に対し宣伝費は前代未聞の2億8000万円。大量のテレビスポットを打つ宣伝戦略は、メディアミックスの先駆けとなった。一躍、業界の風雲児となった角川春樹社長はこの時34歳。10月に行われた完成披露パーティーでは、劇中の登場人物・佐清(すけきよ)を真似て、棺おけから白いマスクをかぶり、白いタキシード姿で登場するなど、何もかもが型破りだった。作品は配給収入13億円の大ヒットに。だが選考会ではそれ以上に「閉塞状態の映画界に刺激を与えた」点が評価された。
主演男優賞の藤竜也は、阿部定事件を題材にした大島渚監督の日仏合作映画「愛のコリーダ」が対象作。表彰式当日は日本映画大賞特別大賞の授賞式があった大阪・茨木市からそのまま駆けつけ、サングラスにGパン姿で登場。一言一言考えながら「今後、どんな台本にぶつかるか、やばい橋を渡っていきます」と喜びをかみしめた。
22歳だった秋吉久美子は、この年5作に出演。「あにいもうと」では、チンピラに袋叩きに遭う場面で実際にあざだらけになり病院に運ばれたことも。自分の思う通りにセリフを直し、巨匠・今井正監督を「こんなわがままな女優を見たことがない」と激怒させたこともあったが、出来上がった作品は息がぴったり。「現場で和気あいあいでも結果が悪ければダメ。“ケンカ”したけど、映画を見たとき初めて監督と出会えた感じで、とてもうれしかった」と当時から個性派ぶりを見せていた。
第1回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「犬神家の一族」市川崑監督
- 角川春樹事務所・角川春樹社長(当時)「映画の出来に関しては賛否両論があった。私としては面白くて観客動員の出来る映画作りを目指したため、賞は予想もしなかった。それだけに喜びも大きい。これからも面白い映画作りに徹したい」
- ■主演男優賞
- 藤竜也「愛のコリーダ」
- 「受賞作は台本を読んだとき、活字のイマジネーションというか、ワーッと魔性のにおいがして、男として勝負する作品だと踏み切った映画」
- ■主演女優賞
- 秋吉久美子「挽歌」「さらば夏の光よ」「あにいもうと」など
- 「これまで、受賞するのは自分の努力の結果で『みなさんのおかげです』なんて涙ぐむのはウソだと思ってたんです。今日の表彰式に臨んで、映画は作る人、演じる人、見る人がいて初めて成立する総合的なものという感を強くしました」
- ■助演男優賞
- 大滝秀治「あにいもうと」「君よ憤怒の河を渉れ」「不毛地帯」
- 「自分がやりたい作品を積極的にどうのこうのというのではなく、与えられた映画を、どういう風に手を抜かずやるかにかけてきた。地味な役者ぶりが評価されてうれしい」
- ■助演女優賞
- 太地喜和子「男はつらいよ・寅次郎夕焼け小焼け」
- 「私、寅さん映画の大ファンだったんです。ですから初めて山田洋次監督や渥美清さんに会っても、懐かしいという思いが先に立ちました。良い作品に巡り合えたうえ、賞をいただけるなんて」
- ■新人賞
- 原田美枝子「青春の殺人者」「大地の子守歌」「凍河」
- 「今日は私の18歳の誕生日。賞はファンのみなさんの何よりのプレゼントです。ブロンズ像は高いところに飾らず、下に置きます。なぜって、いつまでも受賞の甘い夢を見ず、地に足つけてしっかり頑張り、また賞をいただけるようにするための戒めからです」
- ■海外作品賞
- 「タクシー・ドライバー」マーティン・スコセッシ監督
