
ハナ肇が22年ぶりの主演男優賞にガッツポーズ
第31回(1989年2月13日)@イイノホール(東京・内幸町)
ブルーリボン賞中断前、最後に主演男優賞を受賞したハナ肇が「会社物語」(市川準監督)で22年ぶりの栄冠を手にした。ハナは「運が良けりゃ」で受賞したときのことを鮮明に覚えており「当時は今村昌平監督のような、くそリアリズムばかりもてはやされててね。山田洋次監督を認めてくれる人なんていなかった。というより、喜劇映画なんてバカにして、映画記者や評論家が見なかったんだな。僕は頭にきて、家に記者連中を呼んで、手持ちの16ミリプリントを見せたんだ。とにかく映画を見てみろって」。その熱意もあり、同年にはハナだけでなく山田監督が初の監督賞も受賞。喜劇映画を強引に認めさせたのは、ハナの“功績”だ。
「市川準さんという人は(上映時間の)15倍もフィルムを回すんです。こっちもプロですからね、使わないものを一生懸命やったって仕方ないじゃないかって、ずいぶんぶつかりました。でも考えてみりゃ、その辺が良かったのかなあ」22年の時を経て再びの受賞に、「58歳という年で再びこの主演賞をいただけたことがたまらなくうれしい。ざまあみろ」とガッツポーズを見せた。
ハナはこの4年後、93年に肝細胞がんのため63歳で亡くなる。定年を迎えた会社員の悲哀をしみじみと描き、クレージーキャッツの7人が18年ぶりに共演したことでも話題になった「会社物語」は、メンバー全員がそろった最後の作品になった。
「異人たちとの夏」で、片岡鶴太郎と助演賞をアベック受賞したのは秋吉久美子。前年も同賞を手にしており、2年連続同部門を受賞した初めての俳優になった。
第31回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「敦煌」佐藤純彌監督
- 「日本映画の国際化へのアプローチと、監督はじめスタッフ、キャスト、そして中国の多くの友人たちのご苦労が分かっていただけたと思うと、今後の製作に大きな励みとなります」(製作総指揮の徳間康快・徳間書店社長)
- ■監督賞
- 和田誠「怪盗ルビイ」
- 「今回の受賞で今後はアマチュア監督ですと言っていられなくなるようで緊張しています」
- ■主演男優賞
- ハナ肇「会社物語」
- ■主演女優賞
- 桃井かおり「木村家の人びと」「噛む女」「TOMORROW/明日」
- 「20代はこんなに長く(女優を)やってる予定じゃなかったから、自分を売り飛ばしすぎちゃった。この仕事好きだなと分かって、普通のおばさん女優になろうって決めたの」
- ■助演男優賞
- 片岡鶴太郎「異人たちとの夏」
- 「監督から自由にやってくれと言われ、全く演技はしていないが、それだけに今回の受賞は自分自身への励みになります」
- ■助演女優賞
- 秋吉久美子「異人たちとの夏」
- ■新人賞
- 緒形直人「優駿」
- 「父(緒形拳)は僕の演技を見て『ポテンヒットだな』と言ってくれた。父にしては最高のほめ言葉です」
- ■外国映画賞
- 「ベルリン・天使の詩」ヴィム・ヴェンダース監督
- ■特別賞
- 「となりのトトロ」「火垂るの墓」(アニメ映画の枠を超えて大衆にアピールした企画・製作に対して)
- 邦画ベスト10
- 異人たちとの夏(大林宣彦)
- 会社物語(市川準)
- 怪盗ルビイ(和田誠)
- 木村家の人びと(滝田洋二郎)
- TOMORROW/明日(黒木和雄)
- となりのトトロ(宮崎駿)
- 敦煌(佐藤純彌)
- バカヤロー! 私、怒ってます(渡辺えり子ほか)
- マルサの女2(伊丹十三)
- 優駿(杉田成道)
- ロックよ、静かに流れよ(長崎俊一)
- 洋画ベスト10
- ウォール街(オリヴァー・ストーン)
- グッドモーニング・ベトナム(バリー・レヴィンソン)
- 黒い瞳(ニキータ・ミハルコフ)
- 存在の耐えられない軽さ(フィリップ・カウフマン)
- 遠い夜明け(リチャード・アッテンボロー)
- 八月の鯨(リンゼイ・アンダーソン)
- ブルースが聞こえる(マイク・ニコルズ)
- フルメタル・ジャケット(スタンリー・キューブリック)
- ベルリン・天使の詩(ヴィム・ヴェンダース)
- ミッドナイト・ラン(マーティン・ブレスト)
- ラスト エンペラー(ベルナルド・ベルトルッチ)
(50音順)