
大コケ映画が作品賞&主演男優賞の2冠
第29回(1987年2月12日)@イイノホール(東京・内幸町)
「史上まれにみる大コケ映画」と揶揄(やゆ)された「ウホッホ探検隊」が、映画賞の頂点をつかんだ。作品賞と主演男優賞の2冠。売れっ子の森田芳光監督が脚本を手がけ、製作費1億8000万円をつぎ込んだ作品だが、配給収入はわずか2000万円(興行収入約3400万円)だった。それだけに根岸吉太郎監督も田中邦衛も大喜び。授賞式の壇上で、司会の十朱幸代までを巻き込んで、肩をたたき合いながら喜び合う。根岸監督は「後半40分の逆転トライって感じ。最高の気分ですよ」と喜びを表現した。
食品会社の研究員という慣れない理系キャラクターを演じた田中は、「年を取ってくると1本1本全力を振り絞ってやらないと周りの人についていけなくなる。あまりにつらいんで転業を考えたこともありますが、これでまた“マラソン”を続けていこうという気になりましたよ」と俳優業を続ける励みにもなったようだ。
第18回での新人賞に続き2度目のブルーリボンになったのが、「波光きらめく果て」で助演女優賞を獲得した大竹しのぶ。「(この年の映画出演は「波光-」1本だけで)すみません。主人にもらっていいのかしら、と言ったんですよ」。
また、いつも候補に名を連ねながら初受賞となったのが「海と毒薬」で監督賞の熊井啓監督。遠藤周作氏の原作を、奥田瑛二と渡辺謙の共演、白黒の映像で映画化した。ブルーリボン受賞直後の第37回ベルリン国際映画祭で銀熊賞に輝くなど、国際的にも高い評価を受けた。
第29回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「ウホッホ探検隊」根岸吉太郎監督
- 「もう1回、ブルーリボン賞を狙い、なおかつ客の入る映画を作ってみせますよ」
- ■監督賞
- 熊井啓「海と毒薬」
- 「『海と毒薬』は映画化しても絶対に客は来ないと15年間も営業関係者から言われ続けました。しかし観客は必ず理解してくれると確信していた」
- ■主演男優賞
- 田中邦衛「ウホッホ探検隊」
- ■主演女優賞
- いしだあゆみ「火宅の人」「時計/アデュー・リベール」
- 「選考会の結果を待つ間、自宅で待っててガッカリすると嫌なので、プールで泳ぎながら“念力”で祈っていました」
- ■助演男優賞
- すまけい「キネマの天地」
- 「年が若ければ女なら“シンデレラ”なんでしょうが、この年(51歳)では照れくさいね。本当は“無冠の帝王”がいいんですが、もう後に引けませんね」
- ■助演女優賞
- 大竹しのぶ「波光きらめく果て」
- ■新人賞
- 有森也実「キネマの天地」
- 「うれしいのと不安なのと半々。この仕事は続けたい。早く有森也実が演じているんだと思ってもらえるようになりたい」
- ■外国映画賞
- 「カラーパープル」スティーブン・スピルバーグ監督
- ■スタッフ賞
- 極地での困難な撮影を成功させた「植村直己物語」のスタッフ
- ■特別賞
- 「コミック雑誌なんかいらない!」を企画・脚本・主演の1人3役で成功させた内田裕也
- 「デルス・ウザーラ」「戦場のメリー・クリスマス」「乱」など、外国との合作映画を実現させた日本ヘラルド映画前社長の故・古川勝巳氏
- 邦画ベスト10
- 植村直己物語(佐藤純彌)
- ウホッホ探検隊(根岸吉太郎)
- 海と毒薬(熊井啓)
- 火宅の人(深作欣二)
- キネマの天地(山田洋次)
- 恋する女たち(大森一樹)
- コミック雑誌なんかいらない!(滝田洋二郎)
- 新・喜びも悲しみも幾歳月(木下恵介)
- 人間の約束(吉田喜重)
- 鑓の権三(篠田正浩)
- 洋画ベスト10
- 赤ちゃんに乾杯!(コリーヌ・セロー)
- 愛と哀しみの果て(シドニー・ポラック)
- エイリアン2(ジェームズ・キャメロン)
- カイロの紫のバラ(ウディ・アレン)
- カラーパープル(スティーブン・スピルバーグ)
- ストレンジャー・ザン・パラダイス(ジム・ジャームッシュ)
- トップ・ガン(トニー・スコット)
- パパは、出張中!(エミール・クストリッツァ)
- 暴走機関車(アンドレイ・コンチャロフスキー)
- 未来世紀ブラジル(テリー・ギリアム)
(50音順)