
千秋実と十朱幸代が30年ぶりのアベック受賞
第28回(1986年2月13日)@イイノホール(東京・内幸町)
第6回「夫婦善哉」の森繁久彌&淡島千景以来、30年ぶりのアベック主演賞(紙面上の史上初は誤り)が誕生した。
「花いちもんめ」の千秋実と十朱幸代。アルツハイマー病の老人を演じた千秋は、実生活でもこ75年に脳卒中で倒れ、一時は再起不能とさえ言われた。「脚本にホレこんで役作りに苦労することはなかったから」と振り返った千秋だが、治ったとはいえ、後遺症でセリフを覚えるのにも人の倍ほど時間がかかったという。ボロボロになるまで台本を読み込む役者根性で撮影をやり通した。
そんな千秋を撮影中、ずっと見ていた十朱は「夕方になると疲れてぐったりしながら、カメラの前に立つとシャンとなる。そんな気力にあおられました。千秋さんのおかげで撮影中、地熱のようなものが心の中で燃えました」とたたえた。
「乱」で意外にも初めて監督賞を受賞(作品賞は4度目)した黒澤明監督が、千秋を映画の道に誘った。49年「野良犬」で映画デビューすると、「七人の侍」や「隠し砦の三悪人」などで印象的な脇役を務め、黒澤組の常連になる。99年11月、前年に亡くなった黒澤監督の後を追うように急性心肺不全のため82歳で死去。「七人の侍」を演じた7人の侍の中では一番最初に死ぬ平八役を演じたが、実生活では一番の長寿だった。
また前年9月に急性骨髄性白血病のため急逝した故・夏目雅子さんに特別賞が贈られた。会場には夏目さんの母・小達スエさんも姿を見せ、「今は毎晩、雅子と夢で会うのが楽しみです」と話していた。
第28回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「乱」黒澤明監督
- 「『乱』は」製作費捻出(ねんしゅつ)の過程で、後に続く若い人たちに道をつける意味からも、企業にかけ合い、援助をあおぐなど一生懸命やった」
- ■監督賞
- 黒澤明「乱」
- ■主演男優賞
- 千秋実「花いちもんめ」
- ■主演女優賞
- 十朱幸代「花いちもんめ」「櫂」
- 「前は『年功序列だ』とか『まぐれ』とかいろいろ言われた。これで悪友を見返せます。地味な映画が認められてうれしい」
- ■助演男優賞
- ビートたけし「夜叉」
- 「商品がモンブランの万年筆とはさすがビンボー記者さんがやる賞。権威ある賞は金をかけないものと再認識した」
- ■助演女優賞
- 藤真利子「薄化粧」「危険な女たち」
- 「(亡くなった)父(作家の藤原審爾)には報告できず残念ですが、賞の重みを心に刻み、いい女優になって恩返しをしたいと思います」
- ■新人賞
- 斉藤由貴「雪の断章-情熱-」
- ■外国映画賞
- 「刑事ジョン・ブック/目撃者」ピーター・ウィアー監督
- ■スタッフ賞
- 森田芳光監督と「それから」のスタッフに対して
- ■特別賞
- 花の盛りに惜しまれて急逝された夏目雅子さんに対して
- 「乱」の合作実現に貢献したヘラルド・エースのコーディネートに対して
- 邦画ベスト10
- 薄化粧(五社英雄)
- 恋文(神代辰巳)
- それから(森田芳光)
- 台風クラブ(相米慎二)
- 花いちもんめ。(伊藤俊也)
- 火まつり(柳町光男)
- ビルマの竪琴(市川崑)
- 夜叉(降旗康男)
- ラブホテル(相米慎二)
- 乱(黒澤明)
- 洋画ベスト10
- アマデウス(ミロス・フォアマン)
- インドへの道(デヴィッド・リーン)
- キリング・フィールド(ローランド・ジョフィ)
- 刑事ジョン・ブック/目撃者(ピーター・ウィアー)
- 恋におちて(ウール・グロスバード)
- コットンクラブ(フランシス・フォード・コッポラ)
- ターミネーター(ジェームズ・キャメロン)
- バック・トゥ・ザ・フューチャー(ロバート・ゼメキス)
- パリ、テキサス(ヴィム・ヴェンダース)
- ベスト・キッド(ジョン・G・アヴィルドセン)
(50音順)