
黒澤明監督3度目の作品賞 仲代達矢が隆大介と師弟受賞
第23回(1981年2月10日)@イイノホール(東京・内幸町)
黒澤監督が10年ぶりに邦画のメガホンを執った「影武者」が、「復活の日」や「ツィゴイネルワイゼン」を抑えて作品賞に輝いた。
撮影時には主演予定だった勝新太郎と衝突。勝が降板するアクシデントもあったが、前年の第33回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを獲得。配給収入でも27億円をマークし、日本映画の最高記録を塗り替えた。
黒澤監督にとっては「隠し砦の三悪人」(第9回)、「赤ひげ」(第16回)に続く3度目の作品賞。さらに勝に代わって主演を務めた仲代達矢が主演男優賞、新人賞も隆大介が受賞し、3部門を制した。隆は仲代が主宰する「無名塾」の2期生。仲代は「初めて見たとき、若いくせに陰気で影を背負っている感じが印象的だった。こういう役者はいない」と考えて採用を決めたという。役柄では武田信玄(仲代)と織田信長(隆)と敵味方に分かれたが、うれしい師弟コンビでの受賞となった。
この年は報知映画賞、毎日映画コンクールでも作品賞に輝いた「影武者」だが、黒澤監督が賞のあり方を批判した日本アカデミー賞は、ノミネートの時点で辞退。7部門でノミネートされた仲代ら出演者とスタッフも、黒澤監督の考えに同調して辞退した。「影武者」不在の日本アカデミー賞で作品賞に輝いたのは、鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」だった。
授賞式は黒澤監督は体調不良で、また前年の主演男優賞でこの年の司会を務める予定だった若山富三郎も発熱のため欠席した。しかし「影武者」にも出演した桃井かおりが独特な口ぶりで会場を盛り上げた。
「二百三高地」で助演男優賞に輝いた丹波哲郎は「これまでに賞をもらっても不思議ではないのに、私にはなかった。審査員は目がないと思っていた。でも、やっぱり目があった。私は賞をもらってうれしがるタチ。これからもよろしく」とユーモアたっぷりに話し、観客を喜ばせていた。
第23回の受賞者・受賞作
- ■作品賞
- 「影武者」黒澤明監督
- 「映画作品というものは、その製作に参加した多数のスタッフの努力の結晶です。作品賞というものは、そのスタッフ全員に与えられたものだと考えたい」
- ■監督賞
- 鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」
- 「日本アカデミー賞には黒澤さんがいないので引き立たないが、こちらは黒澤さんも拒否していないので引き立つね」
- ■主演男優賞
- 仲代達矢「影武者」「二百三高地」
- 「話題性を兼ね備えた作品に出られただけで幸せだったのに、その上、ご褒美を。それもウチの隆と同時にいただけるなんて」
- ■主演女優賞
- 十朱幸代「震える舌」
- 「この10年間でたった2本しか出ていないでしょ。映画って私には縁遠いのかなって思っていたからなおさらうれしい」
- ■助演男優賞
- 丹波哲郎「二百三高地」
- 「『二百三高地』は出演を何回も辞退した映画。嫌々入った作品です。それが賞をいただいたというのはちょっと皮肉な気持ちもしますが、うれしい」
- ■助演女優賞
- 加賀まりこ「夕暮まで」
- 「演技計算をするといった余裕もなく、出演場面を消化してしまったので、正直言ってノミネートされただけですごくうれしかった」
- ■新人賞
- 隆大介「影武者」
- 「師匠仲代と同じ作品で受賞するとは、新人としてはあまりに恵まれすぎて空恐ろしい。これもひとえに黒澤先生のおかげ」
- ■外国映画賞
- 「クレイマー、クレイマー」ロバート・ベントン監督
- ■スタッフ賞
- 石井聡亙監督と「狂い咲きサンダーロード」のスタッフ(ヤングパワーの意欲的な映画作りに対して)
- ■特別賞
- 「ツィゴイネルワイゼン」とシネマプラセット(新しい映画製作・上映活動に対して)
- 邦画ベスト10
- 影武者(黒澤明)
- 狂い咲きサンダーロード(石井聡亙)
- 太陽の子(浦山桐郎)
- 父よ母よ!(木下恵介)
- ツィゴイネルワイゼン(鈴木清順)
- 二百三高地(舛田利雄)
- 遙かなる山の呼び声(山田洋次)
- ピポクラテスたち(大森一樹)
- 復活の日(深作欣二)
- 震える舌(野村芳太郎)
- 洋画ベスト10
- オール・ザット・ジャズ(ボブ・フォッシー)
- クレイマー、クレイマー(ロバート・ベントン)
- 地獄の黙示録(フランシス・フォード・コッポラ)
- スター・ウォーズ/帝国の逆襲(アーヴィン・カーシュナー)
- 大理石の男(アンジェイ・ワイダ)
- 悲愁(ビリー・ワイルダー)
- マリア・ブラウンの結婚(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー)
- マンハッタン(ウディ・アレン)
- ルードウィヒ/神々の黄昏(ルキノ・ヴィスコンティ)
- ローズ(マーク・ライデル)
(50音順)